『変身物語』
本当に申し訳ないことに、ブログの担当を二か月近く失念しておりました、安野です。情けない。
ここ数週間の生活を振り返ってみたところで面白いネタもなく、己の感受性が錆びついたのか、本当につまらない生活を送っていたのか、暑さで思い出せないだけなのか、どれを取っても嫌だなと思いました。
うむむ、今回はオウィディウスの『変身物語』の話をいたしましょう。
『変身物語』とは、古代ローマの詩人オウィディウス(前43-後18)が書いた、ギリシア・ローマ神話の中でも特に人間や神が変身する物語を集めた詩集です。「ナルキッソスとエコー」や「アポロンとダプネー」などが含まれています。
この『変身物語』の何がすごいのかというと、成立後二千年ほどにわたって文学作品や絵画作品の題材にされ続けてきたということです。例えばシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』ですが、これも『変身物語』の「ピュラモスとティスベ」という話をモデルにしていると言われています。あらすじを説明します。
親に反対されながらも恋人同士であったピュラモス(少年)とティスベ(少女)はある夜、家を抜け出し、町の外れで落ち合うことを決めます。ティスベが先にやってきてピュラモスを待っていましたが、そこへ一匹の獅子が現れました。彼女は逃げ、その途中で身に着けていたヴェールを落としてしまいます。獅子は牛を食べたばかりの血だらけの口でそのヴェールを引き裂き、立ち去りました。
さて、ピュラモスが遅れてやってくると、地面には獣の足跡があって、血の付いたティスベのヴェールが落ちています。彼はティスベが獅子に食べられてしまったと勘違いし、その場で剣を自分の脇腹に突き立てます。彼女の死に責任を感じて自殺しようと考えたのです。そこへ無事な姿のティスベが戻ってきますが、ピュラモスは既に虫の息。ティスベはふたりが死によって永遠に結ばれることを願い、自らも剣の上にうつぶせになりました。その願いは神々や親たちによって聞き届けられ、彼らが死んだすぐそばに生えていた桑の木は、彼らの血を吸い、黒い実をつけるようになりました。
「自殺する前に確認しろよ……」という感想しか出てこないのですが、オウィディウスの語り口は情景が目に浮かぶようで生き生きとしており、後世の作品に用いられたのも納得できる気がします。
他にも、『変身物語』はダンテからピカソに至るまで様々な作家に影響を与えています。(私は今学期だけでダンテ、ギュスターヴ・モロー、マックス・クリンガー、ピカソのレポートに『変身物語』を使いました。多謝。)モチーフが分かると文学や絵画が数倍楽しめたりするので、お暇でしたらぜひ読んでみてください。
(参考文献:オウィディウス、1981、『変身物語 上』、中村善也訳、岩波書店)
ここ数週間の生活を振り返ってみたところで面白いネタもなく、己の感受性が錆びついたのか、本当につまらない生活を送っていたのか、暑さで思い出せないだけなのか、どれを取っても嫌だなと思いました。
うむむ、今回はオウィディウスの『変身物語』の話をいたしましょう。
『変身物語』とは、古代ローマの詩人オウィディウス(前43-後18)が書いた、ギリシア・ローマ神話の中でも特に人間や神が変身する物語を集めた詩集です。「ナルキッソスとエコー」や「アポロンとダプネー」などが含まれています。
この『変身物語』の何がすごいのかというと、成立後二千年ほどにわたって文学作品や絵画作品の題材にされ続けてきたということです。例えばシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』ですが、これも『変身物語』の「ピュラモスとティスベ」という話をモデルにしていると言われています。あらすじを説明します。
親に反対されながらも恋人同士であったピュラモス(少年)とティスベ(少女)はある夜、家を抜け出し、町の外れで落ち合うことを決めます。ティスベが先にやってきてピュラモスを待っていましたが、そこへ一匹の獅子が現れました。彼女は逃げ、その途中で身に着けていたヴェールを落としてしまいます。獅子は牛を食べたばかりの血だらけの口でそのヴェールを引き裂き、立ち去りました。
さて、ピュラモスが遅れてやってくると、地面には獣の足跡があって、血の付いたティスベのヴェールが落ちています。彼はティスベが獅子に食べられてしまったと勘違いし、その場で剣を自分の脇腹に突き立てます。彼女の死に責任を感じて自殺しようと考えたのです。そこへ無事な姿のティスベが戻ってきますが、ピュラモスは既に虫の息。ティスベはふたりが死によって永遠に結ばれることを願い、自らも剣の上にうつぶせになりました。その願いは神々や親たちによって聞き届けられ、彼らが死んだすぐそばに生えていた桑の木は、彼らの血を吸い、黒い実をつけるようになりました。
「自殺する前に確認しろよ……」という感想しか出てこないのですが、オウィディウスの語り口は情景が目に浮かぶようで生き生きとしており、後世の作品に用いられたのも納得できる気がします。
他にも、『変身物語』はダンテからピカソに至るまで様々な作家に影響を与えています。(私は今学期だけでダンテ、ギュスターヴ・モロー、マックス・クリンガー、ピカソのレポートに『変身物語』を使いました。多謝。)モチーフが分かると文学や絵画が数倍楽しめたりするので、お暇でしたらぜひ読んでみてください。
(参考文献:オウィディウス、1981、『変身物語 上』、中村善也訳、岩波書店)
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