目覚めのすぐあとで布団を出るのがことに億劫になってきて、もう冬なんだと自分を納得させることがようやくできました。有末ゆうです。秋がわたしを引き留めるとして、両肩に置かれた片方の手はきっと八月担当分のブログで、もう片方の手は九月の担当分でしょう。あるいは夏です。夏に忘れてきたものがかさばりすぎていました。
大学生のこととなると、年がひとつ巡るとそれからすぐに春休みがやってきます。だからいまのわたしたちはきっと遠からぬ日にテストとレポートに圧倒されながら死んじゃいそうになっていて、それでも夏の終わりと一緒にはじまった後期はどうあれおわります。学生の四か月なんてあっというまですね。その間にわたしはどれだけのことをできたんだろうなんてふと考えてみて、やっぱり死んじゃいそうになりました。創作サークルに入っておいて、この後期はお話のひとつも書くことができませんでした。スランプですね。存在意義。
不肖のわたしでございますが、九月のまるまる全部を費やしてひとつのお話を書きました。でもそれ以来わたしのワープロくんは、授業のレポートと発表資料をつくりあげることばしか語っていません。わたし自身もきっとそうでしょう。すっかり創作や想像、あるいは空想というものから頭が離れてしまっていて、ほんとのことをいうならこの文章を書くのにも半年前の息遣いをすっかりわすれてしまったせいで難儀しています。困ったものです。苦しいです。存在意義。このまま息が止まってしまったらって考えると、ちょっと怖いです。
そういえば、一年か、二年くらい前に先輩とお酒を飲ませていただいたときに、ふわふわした頭でくだを巻いていた気がします。ひとにいわれたことも、自分でいったこともすぐに忘れてしまう気質のわたしですが、あのときのやりとりはなぜだかおぼえています。
「趣味については」わたしがそういったんです。「趣味については飽きっぽい性格で、昔は一生付き合っていくんだろうとおもっていた音楽も、料理も、今振り返れば数年と経たないうちに概ねやめてしまっていたんです」
「はあ」先輩は眠そうな声で相槌を打っていたとおもいます。「そんで」
「創作についてもそうなるのかなとおもいまして。いまは楽しいんですけどね。打ち込んでもいます」
「いやなの?」
「音楽とか、料理とか。冷めてしまってもべつだんいやではなかったです。でもいやなことがあるとすればそのことです。いまの自分がよりかかっているものが、いつか大したものじゃなくなるんです」
「若いね」
「昔からそんななんです。いま好きで、なんども聴いているアルバムを、きっと数か月もすれば聴いていないだろうなとかおもってすこし悲しくなるんです」
「エモいね」
「それがなんか怖いんですよね」
わたしはカップに入っていた日本酒を干しました。先輩は自分のカップにウイスキーを注いでいました。まるこい瓶は空になっていました。
「いまは楽しいんでしょ」先輩はいいました。「ならいいじゃん。未来になってもそうなるんなら」
「別の趣味?」
「あるいはそれが一生の」
「あんま想像つきませんね」
「いま考えることじゃないんでしょ。いつ考えることでもない」
先輩はそれから数か月のうちに大学を卒業して就職しました。あまり連絡を取り合うような仲でもないから生活がどんななのかはよく知りませんが、就職しても先輩は年に二、三本くらい作品をあげています。かくありたいものだ。そうおもっています。
まだわたしは別の趣味を見つけていないようです。でもまだそれも必要ないみたいです。四苦八苦して、息が辛くて、もどかしくってむずがゆくって、それでもなんとかことばをひねりだしてキーボードを打つわたしの指先は、まだ楽しめているみたいです。
なんて、ひさしぶりにお話めいたものを書いてみました。実際のことをいえば:べつにそんなに悩んでない。存在意義がどうだとか考えちゃいません。わたしがお話を書くのはただ面白いねっていってちやほやされたいという欲求によってだけですし。承認欲求モンスター! まだわたしのそれはそんなに大きくなっていない、と、信じたいものです。いつかそれが幼いまんまで大きくなったら、そのときはそのときで、辛くって苦しくって死んじゃいそうで叫びながら、それでもなんか書いているんでしょう。書いたはじからまた焦燥感にちりちりしながら泣いてるんです。それでいつかことばが怖くなるんです。でもそのときには、別の趣味を抱きしめているんです。そうだろうか。そうだといいな。やっぱいやかも。なんちゃって。これもまたお話。
なんだかだらだら書いちゃいました。二十三時五十分。夜が眠いんです。でも、おかげで次の年を迎えられそうです。駄文を失礼しました。今度は時期を外さぬブログ担当でお会いしたいものです。それでは。八月下旬、九月上旬担当、有末ゆうでした。エモい文章書いていきたいな。それじゃ、またね。
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