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その懐で眠りにつく

 一度書いて投稿した記事がサーバー落ちで消えた白藤です。「下書きを保存しました」という表示は嘘だったのですか、fc2……。

 教会ネタが出たので便乗。
 私はキリスト教的な意味で神様がいると思ったことはありませんが、教会建築や儀式の美しさ、荘厳さ、信ずる者の敬虔な心には胸を打たれるものがあります。創作欲が掻き立てられますね。
 よしけむさんがどのような教会をご覧になったのかは存じませんが、観光先として名の知れた教会は、敬虔な祈りの場というよりは、歴史と、感謝、畏敬、悲しみを記憶する場という性質を色濃く備えています。過去代々の君主や聖職者、文学者が半分、そしてヨーロッパが急速に脱宗教化していった時代(カトリック再興などについては横においておくとして)、つまり国民国家の勃興以後の時代の追悼碑的なものが残りの半分のスペースを占めている、というのが私の印象です。特に後者は、その期間の短さに比べると非常に多くのものがあります。純粋に神と人とを繋げるための要素とはいうと、それらに比べると、ぐっと少なく感じられます。
 薄明かりに包まれた、ひんやりと肌を撫でる空気の中に足を踏み入れると、ため息をつきたくなるほど荘厳な気配を感じます。かつて、今ほど教会がそれらのものに埋め尽くされていなかった時代、人は美しくかたどられた透かし彫りから差し込む光に神を見たのでしょう。現代においても、敬虔な方はそうなのかもしれません。けれど、教会中に刻まれた文字を読んだ後、もう一度高い天井を見渡すと、そこには神が佇んでいるのではなく、その国の歴史や、その中を一瞬にして通り過ぎていった人々の想いが、降り積もっているような気がするのです。

 上で教会建築などに創作欲を掻き立てられると書きましたが、実は物語に落とそうとして成功したことはありません。その存在はあまりに複雑で、とても小説に書き込めるものではないのです。少し違うかもしれませんが、事実は小説よりも奇なり、ということでしょうか。

 下に、上述の人々の感情の記憶(歴史学界隈の人間はこれを集合的記憶と読んだりしますが)の例を書いています。話としては脇に逸れているので、詳しくは追記で。
 19世紀以降、およそ「国民」の「犠牲」と呼ばれるようなものは、ほとんどすべて、その国の主要な教会で記念されています。プレートを置いたり、記念碑を建立したり、犠牲者名簿を置いたり、大規模なものなら教会内に小さな礼拝堂を作ったりします。プレート、記念碑はどこでもあり、その数も膨大ですが、礼拝堂となると段違いにスペースをとるので、君主や高貴な人間のものがほとんどで、いわゆる「無名の人々への祈り」は多くないです。大戦関係ならどこの国でも一つはあるでしょうが。
 そんななか、私が個人的に感動というか、じーんときたのが、イギリスのセント・ポール大聖堂にあるアメリカン・メモリアル・チャペルです。イギリスを助けるためにアメリカを離れ、そのまま祖国の土を踏むことなく、この地で眠ることになった人々を記念するものです。誰かを助けるために自分を犠牲に出来る心の気高さ、国を越える勇気、国家を繋ぐ絆、感謝の念……その存在を知ったとき、大きく括れば「感動」といえるであろう、様々な感情が私の胸をよぎりました。イギリスとアメリカの関係は"Special Relationship"と呼ばれていますが、「国家に真の友人はいない」(キッシンジャー/米元国務長官)という言葉に代表されるような国際関係の中で、そのあり方はしばしば批判的議論に晒されています。しかし、その一方で、アメリカン・メモリアル・チャペルのような集合的記憶の存在は、確かに両国の関係が普通の国家関係に収まるものではないことを、示唆しているのです。
 このように、ヨーロッパにおいて、特に有名な教会たちは、非常に感情に訴えかける形で、国家のあり方というテーマの中心部の一翼を担っています。それがしばしば政治的メッセージであることは議論の余地がありますが、政治的であるにしろそうでないにしろ、教会はその国家の歴史を堆積し、その長い歴史に比べれば一瞬であった時々の人々の想いが眠り、思い起こされる場所であるのです。


ウエストミンスター寺院内のRAF Chapel
 Henry VII's Lady Chpel内にあるRoyal Air Force Chapel。いかにも後からとってつけたような場所にあります。(出典
ウエストミンスター寺院俯瞰図出典
 記念碑だけなら膨大にあるのですが、教会の中は大抵撮影禁止なので、写真を見つけてくるのは結構大変だったりします。教会や博物館ではやはり紙のメモが手放せません。

 ところで、上記のチャペル名にもあるように、"memorial"という語は「死者を記念する」という意味で使われます。記念碑も大抵「(事件)・メモリアル・(記念碑の種類)」です。たとえば、"Diana Memorial Walk"(ダイアナ記念遊歩道)、"Crimean Memorial"(クリミア戦争記念碑)など。普通の思い出には使いません。したがって結婚式のイベントや、思い出を振り返る行事にメモリアルとつけると、ちょっとしたブラック・ジョークになってしまいます。メモリアルでグーグル検索すると最初に出るゲームとかね。名前だけはやたらと有名なゲームですが、私が内容を知らないだけで、ひょっとして死にネタがあるんでしょうか。

Edit 21:37 | Trackback : 0 | Comment : 4 | Top

 

Comment

 
 

2009.04.19 Sun 18:34Re: ちなみにプレーしたのはPCE版

> 変に知名度が上がったので、
これは例のゲームのことを指しているのでしょうか。それでしたら、いくら有名とはいえゲームはゲームなので、サブカルから程遠い結婚式や記念イベントで使うのがはばかられるほどの影響力はないと思います。それともに他に「メモリアル」を使ったギャグでもあるのでしょうか。
個人的には、正しい用法の認知度向上というか、葬儀式場や霊園関係でよく使われるようになって来たので、次第におめでたいことでは避けるようになった……あたりが真相ではないかと推測しています。
  • #-
  • 白藤彰子
  • [URL]
  • [Edit]

2009.04.19 Sun 00:07ちなみにプレーしたのはPCE版

>最近は正しい用法の認知度が上がったのか
その可能性は非常に低いです。単純に旬を過ぎたから、と見るべきでしょう。
変に知名度が上がったので、下手に使うとギャグにしか見えなくなる、「狙ってるのか」などと勘繰られる、というあたりが一番の理由だと思います。多分ですが。
  • #-
  • 八墓ゆう
  • [URL]
  • [Edit]

2009.04.18 Sat 22:54Re: 虹野さんが良かった

でしょうね。
最近は正しい用法の認知度が上がったのか、以前に比べると「メモリアル」の乱用は減った気がします。
  • #-
  • 白藤彰子
  • [URL]
  • [Edit]

2009.04.18 Sat 21:46虹野さんが良かった

>死にネタ
残念ながらありません。
  • #-
  • 八墓ゆう
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