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 京大公認創作サークル「名称未定」の公式ブログです。
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2021-10

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夜とにんにく。それとあの子。

 こんにちは。こんばんは。そして、はじめまして。この度初めてブログを担当させていただく有末ゆうです。初めてこの場に出てくるという事で恥ずかしい気持ちでいっぱいですが、暖かい目で見ていただければうれしいです。
 さて、わたしも創作サークル「名称未定」に在籍しているという事で執筆活動をしているのですが、最近、創作というのは時として狂気じみてくるなぁ、という事を思います。
 つい先日、久しぶりに午前五時に目を覚まして、柄にもなくテンションが上がっていました。普段は十時ごろにもそもそと布団から這い出るような生活をしているわたしにとってそれは非常に珍しいことで、よしよし今日は調子がいいぞと顔を洗ってにんまり笑い、普段は摂らない朝食を口にしました。バターを塗ったトーストとブラックコーヒー、それと昨日作っていたゆで卵がこんなにおいしいんだと驚いたものです。
 さて、調子がいい日は早々に執筆にとりかかるに限ります。わたしは五年程愛用している薄汚れたノートパソコンを立ち上げて、傍らに置いたうすっぺらいノートに書きつけたうすっぺらいプロットとにらめっこしながら、キーボードをぱちぱちとやってうすっぺらい小説を書いていました(自分でうすっぺらいなんていうのはいけませんね。大作を書いていたと胸を張りましょう)。そのうちに部屋を照らす白い日差しはその光量を増し、わたしの背中はじっとりと汗ばみ始めます。扇風機を「強」にして風を感じながら、小説の中で私立探偵を動かしていたわけなのですが、この探偵たちがなかなか勝手に動き回る。わたしは彼らに手綱をつけて何とかコントロールしようとしていたのですが、どうやらわたしに騎手の才能は無いようです。やれやれ、今回も物語の構造がめちゃくちゃになりそうだ、わたしは自嘲気味なため息を吐いて、ファイルを閉じました。明日はきっと、今日の進捗を無に帰す作業になるんだろうと思って。
 そう、わたしの頭の中にはなんの疑問も無く、「明日」という言葉が浮かんでいました。なぜって、デスクの白い天板は夕焼けの朱色に染まっていたんですから――そこでわたしは、はっとして背後の窓を振り返ったのです。夏の太陽は西へ傾き、立体感のある、しかし薄い雲の前を二羽の鴉がゆっくりと横切っていきました。時計を見れば、既に六時を回っています。飲まず食わずで十二時間以上駄文をこしらえていたってわけで、まったく、狂気の沙汰です。
 疲労に、頭の奥がぴりぴりとしびれるような感覚がしていました。わたしは腕を伸ばして肩の凝りをほぐしてやり、流しへと向かいました。よほど汗をかいていたんでしょう、ぬるく、薬品臭い水道水でさえ驚くほどおいしく飲めました。干からびた体に水を与えてやると今度は胃の方が文句を言い始めます。トーストとコーヒー、それと一つのゆで卵で一日を乗り切れる程、わたしの身体は燃費がいいってわけじゃないみたいです。この時間ならまだ、馴染みのラーメン屋は開いているはずでした。
 わたしは部屋着を脱いで、外用のTシャツとデニムパンツを身に着けました。髪の毛は――誰に見せるわけでもありません――紺色の夏用キャップで隠します。きっとラーメン屋の店主はわたしの髪の事なんて詮索しやしないでしょう。
 財布とハンカチをバッグに入れて、わたしは部屋の外に出ました。外の暑さは日中のそれの残り香みたいなもので、風もあった分、過ごしやすそうです。おいしいラーメンが食べられそうでした。大学入学以来使っているスポークのぐにゃりと曲がった自転車も、心なし嬉しそうです。いい夕べだね、相棒。
 わたしは東大路通を一キロほど南へ向かい、例のラーメン屋へとたどり着きました。馴染みの店員さんの笑顔に迎えられて食券を買い、カウンターに通されます。店主のにーちゃんはいつも通りのとびきりの笑顔を向けてくれました。彼のえくぼで、ぴりぴりと疲れていた頭の奥がほぐされたような気分になりました。わたしは気をよくして、追加で缶ビールを注文してみたりしました。ラーメンがやってくる前に350ミリリットルのそれを飲み干し、腹の奥から滲み出してくる熱に酔います。店主のにーちゃんが「はいよー! おまたせ!」と叫んでわたしの前に並らーめんを置きます。とんこつ醤油で、鶏油をたっぷりかけたやつ。わたしは躊躇なんてしないでおろしにんにくを三匙放り込みました。明日、予定なんてものはないんですから。世の中には溶かさないでにんにくのライブ感を楽しむ宗派もあるようですけど、わたしからすればそれは邪道です。にんにくをぐにゃぐにゃと溶かして、濃厚なスープに姿を消した彼の、隠し切れない面影を楽しむんです。それがいいんじゃあないですか。スープのしみ込んだほうれん草を咀嚼して、麺を啜りました。酒の後の麺。安っぽくて、俗っぽくて、だけど最高の贅沢。それから五分間、わたしはばかみたいにラーメンを掻っ込んで、ご飯も追加してもりもり食べました。それはきっと、今日っていう日の肯定でした。
 店を出ると、もうとっぷりと日は暮れていました。お酒を飲んで自転車を漕いだらいけないな、なんていう順法精神は、幸いにも酔った頭の中に残ってくれていたようでした。わたしはスタンドを上げて、自宅に向けて歩き出そうとしました。その時でした。
「ゆう……?」
 ためらいがちな声が、わたしを呼びました。わたしは振り返りました。そこには一人の女の子が立っていました。いつからか、わたしがめっきり会おうとしなくなっていた子。わたしは、それで、酔いから醒めてしまいました。
「……久しぶり」わたしは軽く手を挙げました。彼女は少し安心したように微笑みました。
「ねえ、ゆう、今ひま? ちょっと歩かない?」
 わたしは三秒間だけ考えて、それで、頷きました。夜の東大路通は、あんがい人が多かった。
「最近、どう」
 元気だよ。
「授業とか」
 順調。
「今日、何してたの」
 なにも。
 二百メートルほど歩いて、信号で停まった時、彼女はわたしに湿っぽいまなざしを向けました。わたしは、目を逸らしました。向かいのスーパーは閉め作業を始めているようでした。
「ねえ、ゆう」
 何。
「今日、あたしの家さ、掃除したんだ。来ない?」
 どこか寂しさを感じさせる声でした。わたしはかぶりを振りました。
「さっき、わたし、にんにく食べちゃって。いっぱい」
「そ、か」
 わたし達の目の前の車道を、大型のトラックが駆け抜けていきました。彼女は眦を拭いました。排気ガスが目に染みたんでしょう。きっと、そうなんでしょう。
「ねえ、ゆう。あたしたち、もう、昔には戻れないのかな」
 わたしは彼女に微笑んで、ゆるく、首を横に振りました。信号が青になりました。わたしは自転車にまたがって、ペダルを一杯に踏み込みました。からっとした夜風が、突然、強く吹きました。キャップが空に舞いました。だけど、わたしは振り返らなかった。
「にんにくごと、愛してやれるからさぁ!」
 彼女の弱々しい叫び声が聞こえました。わたしは遠ざかっていくその声に、小さく、「もう、諦めてよ」と呟きました。彼女には、聞こえなかったでしょう。
 わたしはふと、目元をこすってみました。乾ききっていました。
 浅く、笑いました。
 家に帰って、ウイスキー・ソーダで酔いなおしましょう。それが正しい、今日の終え方です。
 わたしは、ペダルをまた、強く踏み込みました。月の大きな夜でした。

 ……なんていう妄想をなんの臆面もなく書けてしまうわけなんです、しばらく創作なんてやつをやっていると。いや、まったく狂気の沙汰です(それともそんなのはわたしだけなのでしょうか)。というわけで今回はこの辺で。皆さんお元気で。わたしは元気です。いぇい! 担当は二回生の有末ゆうでした。それでは。ごめんね。さようなら。

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